米国での日系移民の足跡調査のアプローチについて、説明します。
まず初めに、米国では、以下の公的機関が移民の記録を保管しています。
- NARA (National Archives and Records Administration):国立公文書館
2. INS (Immigration and Naturalization Service):移民帰化局(旧名称)
USCIS (United States Citizenship and Immigration Services):米国市民権・移民局(現名称)
また、以下の「先祖探し」用検索サイトでも、知りたい情報をキーワード検索することができます。
【1】Family Search(無料)
【2】Ancestry(有料)
(但し、AncestyはNARAの施設内では無料で使用可能)
それから、以下のスタンフォード大学のアーカイブリポジトリでは、過去の邦字新聞(日本語版・英語版)が大量に保管されており、検索・閲覧することができます。
なお、これらの施設やデータベースを用いて調べるときに、日系移民の足跡をたどる手がかりとなる、書類や情報の主なものには、以下のものがあります。
(1) Passenger Lists:乗客名簿
(2) Naturalization record:帰化記録
(3) Citizenship certificate:市民権証明書
(4) Lawsuit record:裁判記録
(5) Picture Bride case file:写真花嫁の記録
(6) Internment records:抑留記録
(7) Alien Case Files (A-Files):外国人ケース・ファイル
(8) US census record:国勢調査の記録
(1) Passenger Lists:乗客名簿
初めは、US Custom Serviceが保管していた。その後、Department of the Treasury(財務省)のSuperintendent Office(警察本部)で保管される。マイクロフィルムでみられる。移民の米国への到着日、年齢、出生地、出港名、親の名前、所持金、職業、日本の住所、alien registration number(外国人登録番号)などが記録されている。
オンライン検索をする場合、「Family Search」や「Ancestry」で閲覧できる。(一部例外あり。)
(2) Naturalization record:帰化記録
連邦裁判所や州裁判所からの記録をNational archiveに保管している。乗客名簿などの移民記録より見つけるのが簡単である。(記録がより最近のものであるため)。
日系1世は1952年まで米国での帰化が認められなかった。 帰化申請書には、Naturalization Petition Number(帰化申請番号)、誕生日、(出生地)、配偶者、子供などの情報が記載されている。
NARAで閲覧・複写することが出来る。
(3) Citizenship certificate:市民権証明書
目当ての人物の番号が分かれば、番号で探す方が賢明。聞きなれない日本人名はスペルが間違ったまま記録されていることが多いため。また、米国入国後、名前を何回か変更している人もいるので、注意が必要。(例えば、養子となった場合やキリスト教へ改宗した場合。)
※Certificates of citizenship (for Japanese Americans born in Hawaii):ハワイ生まれの日系アメリカ人へ 発行された市民権証明書
市民権証明書の番号は「C.C.#XXXX」と表示される。市民権証明書は、日系ハワイ人がハワイの外へ旅行する際に発行された。
(4) Lawsuit record:裁判記録
(3)の帰化記録は、裁判記録でもある。また、1945年前後に市民権放棄をし、市民権を再獲得した場合なども記録が残っている場合がある。
(5) Picture Bride case file:写真花嫁の記録
1900~1920年にサンフランシスコ港へ到着した、写真花嫁の日本人女性2千人分の記録がある。その多くは、一連の情報を記録したケースファイルとして、INS(現USCIS)で保管されている。また、写真花嫁としてやってきた女性は、身元の確認のため、しばしば特別調査会(Board of special inquiry)で尋問を受け、その記録が残っている場合が多い。
1917年に日本人移民を禁止する移民法が制定されたため、それ以降、日本人女性は写真花嫁として米国へ渡ることが禁止された。よって、花嫁を迎えたい日本人男性は、一旦日本へ帰国し、結婚してから米国に戻ることが必要となった。
(6) Internment records:抑留記録
第二次世界大戦中の1942年、12万人の日系アメリカ人が、財産と住居を奪われ、数年にわたり強制収容所 での生活を余儀なくされた。今でも、強制収容所での日系移民の記録が多く保管されている。
(7) Alien Case Files (A-Files):外国人ケース・ファイル
USCISで保管。現在の「移民ケース・ファイル」は、各移民の移民手続・帰化手続に関する全ての記録を含んでいる。1944年以降、米国に移住した全ての移民について、A-Fileが作られている。1944年以前の移民についても、その多くについては、A-Fileが作られているが、ない場合もある。Alien Registration Number(外国人登録番号)で検索すると、様々な個人情報が得られる。
1940年に施行された外国人登録法により、全ての外国人は指紋が記録され、登録用紙への記入を求められた。登録が完了すると、外国人登録番号と外国人登録カードが付与された。
登録用紙には、移民の性別、名前、出生地、子供の有無、身長、生活態度の優良、属する組織、属する外国政府関連組織、軍歴、米国への帰化申請の有無、逮捕・起訴の有無が記入され、指紋が押捺された。
1944年、INS(現USCIS)は、全ての外国人移民の情報をAlien Case Fileとして統括して管理することを決定した。A-fileの長さは人によってそれぞれで、短いものは2ページくらい、長いものとなると200ページにも及ぶものがある。
NARAは、1910年より前に生まれた外国人移民のA-Fileを保管している。一方、USCISは、1910年以降に生まれた外国人移民のA-Fileを保管している。USCISのGenealogy Programを通して、写しを請求できる。
※USCISのGenealogy Program
調査したい人物に関する基本的な情報を提供し、リサーチャーにデータベースを調べてもらう。調査にはUSD65+実費がかかる(2017年11月時点)。一方、NARAでの調査は無料だが、事前に予約が必要。
(8) US census record:国勢調査の記録
参考にするのは良いが、調査対象の本人や家族に関する過去の出来事は、個人の記憶による記録であり、また自発的な回答によるものなので、必ずしも情報が正確とは限らない。
なお、上記以外にも、Birth Certificate(出生証明書)、Address Report Card(住所報告カード)、Immigration Visa(移民ビザ)、Alien Registration(外国人登録)や英語以外の言語で書かれた書類も、先祖調査の重要な手がかりとなりますので、なるべく多くの書類や情報を集めることをおすすめします。